規格住宅とフルオーダー住宅、デザインの自由度はどこまで違うのか

「規格住宅にしたら、デザインは諦めるしかないですか」。
家づくりの相談を受けていると、この質問を本当によく聞きます。

新潟市でインテリアコーディネーターをしている小林奈緒です。
県内のハウスメーカーで設計営業を9年務めたあと独立し、今は注文住宅の内装提案やモデルハウスのスタイリングを手がけています。

冒頭の質問への私の答えは「部分によります」です。
規格住宅とフルオーダーでは、差が大きく出る部分と、ほとんど差が出ない部分がはっきり分かれています。

この記事では、その境目を部位ごとに整理します。
あわせて調査データと、新潟ならではの雪の条件も見ていきます。

「規格」と「フルオーダー」の境目は、会社ごとに違います

最初に知っておいてほしいのは、規格住宅にもフルオーダーにも、国が決めた定義がないことです。
同じ「セミオーダー」という言葉でも、A社とB社で選べる範囲がまるで違うことがあります。

調査でも分け方はそろっていません。
SUUMOリサーチセンターの注文住宅調査は、建てた人に「フルオーダーとセミオーダーのどちらですか」と聞く形で、規格住宅という区分は設けていません。

おおまかな目安を表にすると、次のようになります。

種類決まっているもの自分で選べるもの
規格住宅間取り・外観・構造がほぼ固定用意されたプランの中から選ぶ。色や一部の設備を選べることが多い
セミオーダー基本の仕様や構造の考え方間取りの一部変更、内装や設備のグレード
フルオーダー会社の工法や標準性能間取り・外観・素材・造作までゼロから相談

「自由設計」という言葉にも注意が必要です。
質問サイトでは、注文住宅として契約したのに、手すりの素材も雨樋の形も巾木の色も選べなかったという相談を見かけました。

契約前に「このプランで変えられない部分はどこか」を聞いておかないと、名前だけでは判断できません。

自由度の差は「どの部分か」でまったく違います

私が打ち合わせで説明するときは、家を層に分けて考えてもらいます。
規格住宅とフルオーダーの差が大きいのは下の層、つまり構造に近い部分です。

部分規格住宅フルオーダー
間取り・構造変えられないか、ごく一部だけ自由に相談できる
窓の位置・大きさ、天井高固定されていることが多い自由に相談できる
外観の形固定。外壁の色や素材は選べることが多い形から相談できる
床・壁・建具の仕上げ数パターンから選ぶ素材から選べる
照明・カーテン・家具自由度が高い自由度が高い

間取りと窓は、いちばん差が出るところ

空間の印象を大きく決めるのは、実は窓です。
どこにどの大きさの窓があるかで、光の入り方も、外の景色の切り取り方も変わります。

規格住宅では、この窓の位置がプランと一緒に決まっていることがほとんどです。
吹き抜けや中庭、天井の高さを変えたい、という希望も規格の範囲では通りにくくなります。

「広い土間のある玄関にしたい」「キッチンから庭が見えるようにしたい」といった、間取りと窓に関わる希望が強い人は、フルオーダー寄りで考えたほうが納得しやすいはずです。

内装と照明は、規格住宅でも工夫の余地があります

一方で、照明やカーテン、家具は、規格住宅でもフルオーダーでも自由度はほとんど変わりません。
私が担当した規格住宅のお宅でも、照明の色温度とカーテンの素材をそろえただけで、見学に来た友人から「注文住宅みたい」と言われたそうです。

壁紙のアクセント、ペンダントライトの位置、置き家具の高さをそろえること。
このあたりは入居後でも手を入れられる部分なので、規格住宅だからと諦める必要はありません。

反対に、造作家具はフルオーダーの強みが出るところです。
壁の厚みに合わせたテレビボードや、窓の高さにそろえたベンチ収納は、間取りと一緒に考えるからこそきれいに納まります。
規格住宅で同じことをしようとすると、置き家具でそれらしく見せる工夫が必要になります。

「自由度」と「素材のグレード」は分けて考える

もう一つ、見落とされやすいのが素材の話です。
規格住宅の「安っぽく見える」という印象は、自由度ではなく素材のグレードから来ていることが多いと感じています。

新潟市の青山ホームを例にします。
同社は自由設計の「Villa」「Aira」と、規格住宅の「Sala」を用意していて、公式サイトの仕様一覧を見ると差がよくわかります。

仕様Villa(自由設計)Sala(規格住宅)
床1F・2Fとも無垢挽板フロア1F・2Fとも高意匠シートフロア
窓樹脂トリプルガラスサッシ樹脂ペアガラスサッシ
断熱断熱等級6断熱等級5

Villaには、イタリア漆喰の壁仕上げや、天井まで高さのあるハイドアも標準で入っています。

床に本物の木を使うか、木目のシートを使うか。
写真では伝わりにくくても、素足で歩いたときの感触ははっきり違います。

モデルハウスで「こっちのほうがおしゃれ」と感じたときは、それが間取りの差なのか、素材の差なのかを分けて見てみてください。
素材の差なら、規格住宅のオプションで近づけられる場合もあります。

数字で見ると、フルとセミの差はどこに出ているか

SUUMOリサーチセンターの2025年 注文住宅動向・トレンド調査(2025年11月公表、全国の建築者1,342人)を見てみます。

  • フルオーダーで建てた人は79.3%、セミオーダーは20.7%
  • 新潟を含む甲信越・北陸では、フルオーダーが82.2%(首都圏は74.8%)
  • 建築費(土地代を除く)の平均は、フルオーダー3,670万円、セミオーダー2,790万円
  • 延べ床面積の平均は、フルオーダー41.5坪、セミオーダー39.8坪

新潟を含むエリアは、首都圏よりフルオーダーを選ぶ人の割合が高いことがわかります。

平均で880万円の差がありますが、セミオーダーは30坪未満の家が28.9%と多く、面積の違いも含んだ数字です。
「自由度を上げると880万円かかる」と読むのは早計です。

私が面白いと思ったのは、建てるときに重視した点の比較です。
「設計の自由度が高いこと」はフルオーダー32.2%、セミオーダー19.9%と大きな差があります。

ところが「外観のデザインが良いこと」は、フルオーダー28.2%、セミオーダー26.9%でほとんど変わりません。
セミオーダーを選んだ人も、デザインへのこだわりは同じくらい持っているということです。

建てたあとの不満も見ておきます。
国土交通省の令和7年度住宅市場動向調査では、注文住宅を建てた世帯が満足していない点の1位は「価格(予定より高くなった)」で36.1%でした。
「住宅のデザイン」を挙げた人は8.9%にとどまります。

ホクシンハウスが2020年に規格住宅の購入者と注文住宅の契約者、計1,002人に行った調査でも、入居後に「満足」「とても満足」と答えた人の割合は、規格住宅が90.7%、注文住宅が91.9%とほぼ同じでした。
同じ調査で、「外観デザイン」を重要だと思った人は住む前の28.9%から、暮らしたあとには16.2%に下がっています。

デザインの自由度は大事ですが、住み始めると断熱や気密のほうが気になってくる。
これは私が入居後のお宅にうかがったときに聞く声とも重なります。

新潟で建てるなら、雪の条件が自由度を左右します

新潟で家を建てる場合、デザインの話の前に確認しておきたいのが雪です。

新潟市の積雪荷重・凍結深度についてによると、市内の垂直積雪量は中央区と東区が全域100cm、秋葉区では最大130cmと定められています。
積雪1cmにつき1㎡あたり30N以上で計算するので、100cmなら屋根1㎡あたりおよそ300kgの雪を見込むことになります。

しかも、融雪装置や屋根の勾配を工夫しても、100cm未満に減らして計算することはできません。

この重さを支えるために、壁や柱の配置には制約が出やすくなります。
大きな窓、広い吹き抜け、柱のないインナーガレージといったデザインは、雪国ではそのぶん構造の検討が欠かせません。

雪国の暮らしならではの希望も、間取りに関わってきます。
濡れたコートや除雪道具を置ける広めの土間、車から濡れずに家に入れるガレージ、冬場に洗濯物を干せる室内の物干しスペース。
私が新潟で打ち合わせをしていると、こうした要望はほぼ毎回出てきます。
規格プランでまかなえるのか、間取りから考えたほうがいいのかは、ここで判断が分かれることが多いです。

2025年4月からは、木造2階建ての住宅も建築確認で構造の審査を受けることになりました。
国土交通省の建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直しにあるとおり、平屋で200㎡以下の建物以外は、構造によらず構造規定等の審査が必要です。

間取りを大きく変えるほど、そのたびに構造の検討もやり直しになります。
規格住宅を選ぶ場合も、全国共通のプランがそのまま雪国に建てられるとは限らないので、多雪地域向けの仕様が標準に含まれているかは確認してください。

新潟の住宅会社は「規格かフルか」の二択ではなくなっています

最近の新潟の住宅会社を見ていると、どちらか一方に振り切るより、段階を用意する会社が増えています。

ハーバーハウスは「完全自由設計」を掲げる会社ですが、規格住宅の「Box」も出しています。
延床20.23坪で3つのプランから選び、テイストは4タイプ。
2階のフリースペースは住む人が自由に設計できるつくりで、コミコミ価格は1,475万円から(税込1,622万円から)です。

新潟ヒロタカデザイン事務所は、最上位の「Jet」で家具や建具、キッチンまでフルオーダーにする一方、「Coral」を「フルオーダーのスーツと既製品の中間」と説明しています。
先ほどの青山ホームも、自由設計の2商品と規格住宅を並べています。

私はこうした新潟の住宅事例を見比べるとき、新潟のハイエンド住宅を紹介しているTumblrもよくのぞいています。
フルオーダーの邸宅から各社のラインナップまで一覧で見られるので、「自分が惹かれるのは間取りなのか素材なのか」を整理するのに役立ちます。

迷ったときは、こだわりの場所から逆算してください

どちらを選ぶか迷ったら、自分のこだわりが家のどの層にあるかを考えてみてください。

  • 窓の位置、天井の高さ、吹き抜けにこだわりたいなら、フルオーダー寄り
  • 床材や壁の素材を上げたいなら、規格住宅のオプションで足りるか先に確認する
  • 照明や家具で雰囲気をつくりたいなら、規格住宅でも十分に実現できる
  • 土地の形が細長い、高低差があるなら、規格プランが入るかを最初に確認する
  • 打ち合わせに使える時間が少ないなら、選択肢が絞られた規格住宅のほうが楽

規格住宅を選んで予算に少し余裕があるなら、外から見える部分より、毎日手や足が触れる部分にお金をかけるのがおすすめです。
床材、ドアの取っ手、キッチンの天板あたりは、暮らしの満足度に直結します。

打ち合わせでは、次のように聞いておくと話が早く進みます。

  • 「このプランで、変えられない部分はどこですか」
  • 「窓の位置と大きさは、どこまで変えられますか」
  • 「標準の床材を無垢材に変えると、いくら上がりますか」
  • 「多雪地域の仕様は、この価格に含まれていますか」

ここで答えがあいまいなら、契約前にもう一度確かめておくと安心です。

まとめ

規格住宅とフルオーダーの差がいちばん大きいのは、間取りと窓、構造に近い部分です。
照明やカーテン、家具は、どちらを選んでも自由に工夫できます。

「規格住宅は安っぽい」という印象は、自由度より素材のグレードの差から来ていることがよくあります。
モデルハウスでは、何に惹かれたのかを分けて見てみてください。

新潟で建てるなら、雪の重さという条件も自由度に関わってきます。
デザインの希望と一緒に、多雪地域向けの仕様がどこまで含まれているかも確かめておくと安心です。

自分のこだわりがどの層にあるかがわかれば、規格かフルかの答えは自然に出てきます。
迷ったときは、まず好きな家の写真を集めて、どこに惹かれているのかを書き出すところから始めてみてください。