はじめまして。
中小企業向けの採用コンサルタントをしている佐伯亮太と申します。
もともとは住宅設備メーカーで法人営業を10年やっていまして、その後2回の転職を経て今の仕事に落ち着きました。
1回目の転職は、正直に言うと失敗でした。
「営業経験があればどの業界でも通用するだろう」と甘く考えて、企業研究をほとんどせずに飛び込んだ結果、半年で再転職する羽目になったんです。
その経験があるので、未経験から営業職を目指す方の相談を受けるたびに、必ず同じことを伝えています。
「どの会社に入るか」の前に、「どの業界を選ぶか」で考えてください、と。
営業職への転職は、業界選びで9割決まる。
少なくとも私はそう思っています。
この記事では、その理由と、未経験者が業界を選ぶときの具体的な視点をまとめました。
これから営業職に挑戦しようと考えている方の判断材料になれば嬉しいです。
目次
同じ「営業職」でも、業界が違えば別の仕事になる
求人サイトで「営業」と検索すると、不動産、保険、IT、メーカー、人材、エネルギーと、あらゆる業界の求人が出てきます。
これらを「全部同じ営業職」と考えてしまうのが、未経験者が最初にはまる落とし穴です。
職種名は同じでも、業界が違えば仕事内容も年収も働き方もまるで別物になります。
年収も働き方も業界で決まる
営業職の年収は、本人の能力よりも先に「扱う商材の単価と利益率」でおおよそ決まります。
考えてみれば当然の話で、1件数千万円の商材を売る営業と、1件数千円の商材を売る営業では、同じ件数を売っても会社に入るお金が桁違いです。
会社に入るお金が違えば、営業に払える給料も変わります。
私が新人の頃、先輩に「営業の給料は頑張りじゃなくて商材で決まる」と言われて、ずいぶん身も蓋もないことを言うなと思ったのですが、10年営業をやってみて、これはほぼ真実だと感じています。
実際、私の同期で食品業界の営業に進んだ友人と、住宅設備の営業だった私とでは、営業成績の評価がほぼ同じ年でも年収に100万円近い差がついていました。
彼のほうが訪問件数は多く、働く時間も長かったのにです。
個人の努力では埋まらない差が、入り口の業界選びの時点でつく。
だからこそ、最初の選択が効いてくるわけです。
営業スタイルの違いも業界でほぼ決まる
もうひとつ、業界によって大きく変わるのが営業のスタイルです。
- 新規開拓が中心か、既存顧客のフォローが中心か
- 訪問やテレアポで自分から動くのか、問い合わせに対応する形なのか
- 契約までのスピード勝負か、数ヶ月かけて関係を築くタイプか
たとえば個人向けの不動産営業は、初対面のお客様と短期間で契約まで進める瞬発力の世界です。
一方、法人向けのメーカー営業は、同じ担当者と何年も付き合いながら少しずつ信頼を積み上げていく持久力の世界です。
どちらが優れているという話ではなく、向き不向きがはっきり分かれます。
瞬発力型の人が持久力の業界に入っても退屈しますし、逆なら消耗します。
「営業に向いているか」より「どのタイプの営業に向いているか」。
未経験者こそ、ここを先に考えるべきです。
営業職の転職市場はいまどうなっているか
では、そもそも未経験で営業職に転職できるのか。
市場のデータを見てみます。
厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2026年5月の有効求人倍率は1.17倍、正社員に限ると0.99倍です。
詳しい数字は厚生労働省の一般職業紹介状況で公表されています。
一方、dodaの転職求人倍率レポートでは、2026年3月時点の営業系職種の求人倍率は2.72倍。
全体の2.39倍を上回っていて、営業職は転職市場の中でも求人が多い職種です。
このあたりのデータはdodaの転職求人倍率レポートが参考になります。
ただし、楽観できない変化もあります。
同レポートでは、営業採用が「若手・未経験を広く採る」方向から「経験者を軸にする」方向へシフトしつつあることが指摘されています。
つまり、求人自体は多いけれど、未経験なら誰でも歓迎という時代ではなくなってきている。
だからこそ「未経験者を育てる前提で採用している業界・会社」を見極める目が、以前より大事になっています。
未経験者が業界を選ぶときの4つの視点
私が採用コンサルの現場で相談者に伝えている視点は4つあります。
3つにまとめようとしたこともあるのですが、どれも削れませんでした。
視点1:商材の需要が伸びているか
いちばん大事なのはこれです。
需要が伸びている業界は、営業の難易度そのものが下がります。
「いらないものを売り込む」のではなく「必要としている人に届ける」仕事になるからです。
未経験者にとっては、この差が決定的です。
縮小している市場でベテランと戦うより、伸びている市場で経験を積むほうが、成功体験を早く積めます。
では、どうやって需要の伸びを見分けるか。
難しく考える必要はなくて、「国が予算をつけているか」「生活者の関心が高まっているか」の2つを見るだけでも、かなり絞れます。
たとえば省エネ・再エネ、介護、ITセキュリティのように国の政策と結びついた分野は、景気に左右されにくい需要があります。
逆に、ニュースで「市場縮小」「業界再編」といった言葉をよく見る業界は、未経験者の育成に回す余裕が現場から消えていきがちです。
視点2:誰に売るのか
個人向け(BtoC)か、法人向け(BtoB)か。
個人向けは意思決定が早く、成果が出るのも早い。
そのぶん、断られる回数も多くなりがちです。
法人向けは検討期間が長く、論理的な提案力が求められます。
そのかわり、一度取引が始まると関係が長く続きます。
自分の性格がどちらに合うか、ここは正直に自己分析してください。
私は個人向けの瞬発力勝負が苦手で、法人営業だったから10年続いたと思っています。
視点3:給与の仕組み
固定給とインセンティブの比率は、求人票で必ず確認してください。
インセンティブ比率が高い業界は、売れれば20代で年収1,000万円も狙えると言われますが、売れなければ生活が安定しません。
具体的な比較で考えてみます。
「固定給23万円+高率インセンティブ」の求人と、「固定給32万円+控えめなインセンティブ」の求人があったとします。
前者はトップ営業なら後者の倍以上稼げますが、成果が出るまでの数ヶ月は手取り20万円を切る生活です。
未経験者には、後者のように固定給がしっかりあって、成果が出るまでの期間を耐えられる給与体系のほうが安全だというのが私の考えです。
営業スキルは半年から1年かけて身につくものなので、その助走期間に生活が揺らがないことを優先してください。
視点4:教育・研修体制
未経験者にとって、最初の半年の教育環境はその後の営業人生を左右します。
研修制度の有無だけでなく、ロールプレイングや同行営業の仕組みがあるか、資格取得を支援しているか。
このあたりが求人票や採用ページに具体的に書かれている会社は、未経験者を育てる前提で採用している可能性が高いです。
私自身、1回目の転職で失敗した会社は「研修あり」としか書かれていない会社でした。
入ってみたら研修は初日の座学だけで、2日目から一人で客先に放り出されました。
「研修あり」の一言と、「3ヶ月間の同行営業とロールプレイング研修」のような具体的な記載とでは、中身がまったく違います。
逆に「やる気重視!」「未経験でも稼げる!」以外の情報がない求人は、私なら警戒します。
私がいま注目している業界:省エネ・脱炭素分野
ここまでの4つの視点を踏まえて、「じゃあ具体的にどの業界がいいのか」とよく聞かれます。
前職が住宅設備メーカーだった私の土地勘込みの意見になりますが、いま未経験者に勧めやすいと感じているのは、省エネ・脱炭素分野です。
国の後押しで需要が続いている
日本は2050年のカーボンニュートラル実現を掲げていて、2030年度には温室効果ガスを2013年度比で46%削減する目標があります。
太陽光発電や省エネ設備の家庭への導入は、国や自治体が補助金を出して後押ししている分野です。
政策の詳細は環境省の太陽光発電の導入支援サイトにまとまっています。
つまり視点1の「需要が伸びているか」に対して、国策という強い追い風がある業界です。
家庭の電気代への関心も高まっていますから、省エネ機器の提案営業は「必要としている人に届ける」型の仕事になりやすい。
売り込み型の営業が苦手な人にも入りやすい構造だと思います。
実例として:エスコシステムズの企業ページを見てみる
この業界にどんな会社があるのか、実例をひとつ挙げます。
東京・勝どきに本社を置く株式会社エスコシステムズは、省エネルギー機器の提案や電気工事、太陽光発電システムの施工販売を手がける会社です。
2013年設立で、従業員は90名弱。
東北から関西まで拠点を展開しています。
私がこの会社を例に挙げたのは、求人情報の「視点4」にあたる部分が具体的だったからです。
資格取得支援や研修制度に加えて、企業型確定拠出年金、社員旅行やスキー合宿といった社内イベントまで、働く環境の情報がしっかり書かれています。
会社概要や福利厚生の詳細は、マイナビ転職のエスコシステムズ企業ページで確認できます。
省エネ業界の会社がどんな待遇・環境を用意しているのか、業界研究のサンプルとして見ておく価値はあると思います。
ひとつ補足すると、同社の採用サイトには平均年収660万円という数字が出ていますが、これは自社発表の値です。
どの会社の場合でも、年収の数字は求人票の給与欄と照らし合わせて確認してください。
求人票・企業ページのチェックポイント
最後に、業界を絞ったあとの求人票チェックについて。
4つの視点を求人票のどこで確認するか、対応表にまとめました。
| 視点 | 求人票・企業ページで見る場所 | 確認すること |
|---|---|---|
| 需要の伸び | 事業内容、業界ニュース | 商材の市場が拡大しているか |
| 誰に売るか | 仕事内容欄 | 個人向けか法人向けか、新規か既存か |
| 給与の仕組み | 給与欄、モデル年収 | 固定給の額、インセンティブの比率 |
| 教育体制 | 福利厚生欄、研修制度欄 | 研修・同行・資格支援の具体的な記載 |
求人票は「書いてあること」より「書いていないこと」に注意して読んでください。
給与幅がやたら広いのに内訳の説明がない。
仕事内容が抽象的な言葉だけで埋まっている。
そういう求人は、面接で具体的に質問して、答えの解像度で判断するのがおすすめです。
面接でそのまま使える質問例
「質問するのが怖い」という相談もよく受けるので、私が相談者に渡している質問例を載せておきます。
どれも聞かれて困る質問ではないので、遠慮なく使ってください。
- 未経験で入社された方は現在何名くらいいらっしゃいますか
- 入社から初めて契約を取るまで、平均でどのくらいかかっていますか
- 最初の3ヶ月間の研修や同行は、どんな流れで進みますか
- 給与のモデルケースで、インセンティブが占める割合はどのくらいですか
これらの質問にすらすら答えられる会社は、未経験者の受け入れに慣れています。
逆に、答えが曖昧だったり「やる気次第です」で片付けられたりしたら、その会社での立ち上がりは自力頼みになると覚悟したほうがいいです。
面接は会社があなたを見る場であると同時に、あなたが会社を見る場でもあります。
質問の答えは、求人票よりずっと正直です。
まとめ
未経験からの営業職転職について、私の考えをまとめます。
- 同じ営業職でも、業界が違えば年収も働き方も別物になる
- 営業求人は多いが、未経験なら誰でも歓迎という市場ではなくなりつつある
- 業界選びは「需要の伸び」「売る相手」「給与の仕組み」「教育体制」の4つで見る
- 省エネ・脱炭素分野は国策の追い風があり、未経験者が入りやすい構造だと感じている
1回目の転職で失敗した私が言うのもなんですが、業界選びを間違えると、どれだけ頑張っても報われにくい環境で消耗します。
逆に、伸びている業界を選べば、同じ努力が何倍にもなって返ってきます。
営業職そのものに向き不向きはあまりありません。
向き不向きがあるのは「業界と営業スタイルの組み合わせ」のほうです。
焦って「営業ならどこでもいい」と飛び込む前に、まず業界を研究する時間を取ってください。
その数週間が、入社後の数年を守ってくれます。



